山野でも、人里でも、市街地でも、樹木はおもしろい!

古くから神様の国だから、出雲地方には神社が多い。
神社の厳かな雰囲気は、祀られている神様のいわれや神殿の造りなどから生み出されているのはもちろんだけれど、森林科学科出身の自分としては、ご神木を始めとする境内の樹木も気になるところ。

私の故郷である長野市近辺の神社の樹木と、松江周辺の神社のものは大分種類が違っています。日本列島の北から南で、樹木の自然植生が違うのだから、神社の樹木が違ってくるのも不思議なことではないけれど、その地域の樹木を知ることで、人々の生活や信仰の様子を窺い知ることができるような気がします。

最近、私が知った樹木に『オガタマノキ』というのがあります。この木は、長野市や今まで住んだ地域の神社では見かけませんでした。神道と関係が深い木で、『オガタマ』は『招霊』(おぎたま)という言葉に由来するそう。『招霊』には、お盆にあの世から帰ってくるご先祖様の霊を迎えるという意味があるのだとか。モクレン科特有のおもしろい果実が徐々に薄桃色に色づいていき、これが弾けると真っ赤な種がのぞく様子はなんとなく神秘的。この果実の部分のかたちは、巫女さんの持つ神楽鈴の原型といわれているそうです。『神楽鈴』を調べてみると、確かにオガタマノキの果実の部分とかたちがそっくり!古代は、オガタマノキの枝を手に、巫女さんたちは舞を踊っていたのかもしれません。このオガタマノキ、松江市内では、松江神社や売布神社、白潟天満宮の境内で見ることができました。奥出雲の三沢神社にも、稚樹が植えられてあったように思います。

オガタマ1

【売布神社の立派なオガタマノキ】

樹木と出会うのは楽しい。 それは山野だけではなく、人里や市街地でも同じです。
松江市では、NPO法人もりふれ倶楽部さんや市民ボランティアの皆さんを中心とした樹木マップ制作委員会の方々が、『松江樹木巡り』という素敵な樹木マップを作っています。それは普段行かないような特別な場所ではなく、生活に身近なところにある木々たちを紹介しています。
今、風土記の丘周辺では、『ふどきのおか日和』のプログラムが順次開催中ですが、11月16日(土)には、この樹木マップ制作委員会の皆さんにより、茶臼山で樹木を始めとした植物の観察会が行われます。 秋の休日のひととき、紅葉や景色を楽しみながら植物観察をしてみませんか。

樹木マップ制作委員会さんの樹木マップが松江市のHP上で見られます。とても楽しいマップなので、こちらもぜひご覧ください。

オガタマノキ

【オガタマノキの葉は滑らかでギザギザがなくて特徴を掴みづらい。描くのが難しい。】

 

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